音楽療法でなぜ統合失調症が再燃するのか?

音楽療法の研究を
みてみると

音楽療法で
統合失調症が再燃した
と言うケースに
あたることがあります.

今日はどうして
そういうことが起きるのか?
ということを
文献をもとに解説していますので

ぜひ最後まで
お読みください.

音楽療法でなぜ統合失調症が再燃するのか?

それでは、行ってみましょう!

まずは今日の
1曲からですね!

お化粧 (病院バージョン)

さて今日は
音楽療法の話題です.

こちらのブログでは
音楽療法のポジティブな側面として
統合失調症への効果が期待できる
という文脈でよく
音楽療法をご紹介しています.

今日はこれと逆で

音楽療法が
統合失調症の陽性症状を悪化させて
急性期を抜けた患者さんが再燃して
また急性期に戻ってしまうことについて

概念をご紹介しながら
説明したいと思います.

前提として
よく音楽療法では
統合失調症に効果があるという
お話しがされるのですが

それは主に
陰性症状と言われる
自閉やひきこもりなど
人格水準の低下に効果が期待できる
ということがあります.

統合失調症には陽性症状と陰性症状が
主な症状としてあるのですが

このうち
幻覚・妄想といった
陽性症状に関しては

音楽療法では
それを悪化させてしまうような
側面があるということも
言われているようです.

理由として
統合失調症の患者さんの
時間の感じ方と
音楽療法の本質的な効果の
かみあわせのようなものが
あるんだそうです.

なぜ統合失調症の陰性症状に
音楽療法が効くのか?
という部分に関しては

以前ご紹介させていただいた
馬場存先生の
音楽療法の本にヒントがありましたので
ご紹介させていただきます.

こちらの本には
木村敏先生の
「時間と自己」という
文献からの引用があります.

木村は、個人の時間体験の構造を説明するために,『アンテ・フェストゥム』『ポスト・フェストゥム』『イントラ・フェストゥム』の3つの概念を提唱しています.

上記P92より

『アンテ・フェストゥム』は『祭の前』の意から転じて「未来の可能性を求める先走りあるいは「予兆への過敏」の意味,『ポスト・フェストゥム』は『祭の後』あるいは「取り返しのつかない過去への悔やみ」の意味で用いられています.

上記P92より

そして今の本題『イントラ・フェストゥム』は,てんかんや躁病,精神病の急性期にみられるような現在の瞬間への没入を特徴とする時間構造で,それらは病気に限らず,一般人にも経験される「愛の恍惚,死との直面,自然との一体感,宗教や芸術における超越性の体験,災害や旅における日常的秩序からの離脱などの体験」を指すと木村は述べています.

上記P92より

その時間構造は「現在への密着,ないしは永遠の現在の現前」とし,その特徴を「日常性を保証する理性的認識の座としての意識の解体」としています.やや難しい表現ですが,過去も未来も一時的に忘れてしまい現在に没頭するというようなところでしょうか.

上記P92より

木村先生のおっしゃる
一時的な意識の解体というのが
音楽では起こるようで

これ統合失調症の固定化した
陰性症状を動かし
一時的な解体のあとに
治癒へと向かう効果を
もたらすということのようです.

もう少し引用させて
いただきます.

先述の,器質力動説を提唱したエイ(Ey H,1981)は,意識について,現在の体験に関わる「共時的な意識野」(今この瞬間の意識,というニュアンスでしょう)と,過去から未来へつながる通時的な自我意識ないし人格」(過去から今まで自分は一貫・連続しているという意識でしょう)を区別しました.

上記P92より

そして,「急性の」精神病では前者が障害されるとし,器質力動説の立場から,その意識野の解体により躁うつ,幻覚・妄想,錯乱・夢幻などの状態像が生じるとしています.木村も,精神医学の領域においては,イントラ・フェストゥムを,分裂病(統合失調症),躁うつ病,非定型精神病など,ほとんどすべての精神病にみられる急性錯乱状態において,またてんかんの発作症状において,病気の種類にはかかわりなく広く出現しているので,エイのいう『急性精神病』の状態に共通点があるようです.

上記P92,93より

このように,音楽に没入する体験は,その没入の程度や,主体の病態などにもよるので,必ずしも急性精神病ほどには重くないものの,軽い意識の解体をもたらして急性精神病へ向かう体験であると考えることが可能です.

上記P93より

この本の中では
統合失調症の患者さんが
音楽療法のセッションを受け
音楽に没頭したあとで
治癒に向かっていくという描写が
あったりします.

しかし同時に
音楽のこうした一時的な解体
というのは

急性期の精神病へと向かうような
本で言う
イントラ・フェストゥム的な要素があるので

急性期を抜けたばかりの患者さんや
陽性症状の強く出ている患者さんには
音楽療法は慎重に行なったほうがいい
ということのようでした.

イントラ・フェストゥムの項目に関して
愛の恍惚とか死への直面というものが
挙げられていましたが

いずれも統合失調症の患者さんに
とっては急性期の症状が出てしまうような
ストレスの大元となるような
現象ということは言われていますよね.

人生の段階でステージが
切り替わることで
統合失調症が再燃してしまうことは
よく知られていることかなと
思いますが

音楽療法でも
同じような作用が
起きることが示唆されています.

私自身も
交通事故に遭ったときに

音楽でパッと視界が
開けたような感じがして
ぽんと次のステージに
病状が進んだ感覚を
持ったことがあったのですが

これは一歩踏み違えると
病状の再燃ということも
あったのかもなと
思いました.

こういう文献をみると
やはりどんなものにも
音楽って効くわけではなく

音楽は万能薬では
ないんだなと
思い知らされます.

もちろん大きな効果が
期待できて

ほかの治療法では
なかなか改善しなかったものが
よくなっている例も
たくさんあるのですが

音楽をやる身として
全て音楽で解決できるわけでは
ないことは
覚えておきたいなと思いました.

今日は音楽療法が
統合失調症の陽性症状を引き起こし
急性期のように再燃を起こしてしまう
理論などについて
説明させていただきました.

今日の新曲は
こちらです.

https://linkco.re/h9p6B9R5

それでは、今日はこの辺で.
いつもお読みいただき
ありがとうございます.

また明日です!

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